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眼科開星堂諸岡診療所

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コンタクトレンズ

ソフトコンタクトレンズ新時代

「ハードレンズと比べてソフトレンズは着け心地はいいけれど目に悪い」これは昔からよく言われていることですが、この目に悪いとはレンズの汚れおよび角膜の酸素不足が原因のトラブルが起きやすいということです。

まずレンズの汚れについてはどうでしょうか。レンズは使用しているうちにタンパク質やカルシウム系の汚れが表面に付着してきますが、これらの汚れがアレルギー性結膜炎や角膜障害を引き起します。 ソフトレンズは素材がデリケートなため、ハードレンズ同様の強いこすり洗いや強力な薬品洗浄が出来ず、たとえレンズケアをしっかり行っていても汚れが蓄積してきます。このため現在は特殊な場合(必要な度数、カーブや大きさが使い捨てレンズにない場合)を除き、使い捨てレンズを選択するほうがいいといえますし、交換頻度も一ヵ月よりも二週間、二週間よりも一日とより短いほうが理想的なのです。

角膜の酸素不足についてはどうでしょうか。
ソフトレンズはハイドロゲルという含水性の素材から出来ていますが、空気中の酸素はまずレンズの中の水分に溶けたのち角膜に供給されるといった間接的なやり取りになります。このため長時間装用でドライアイになるとレンズも乾燥し、極端な酸素不足が引き起こされるのです。

この問題を解消するために、近年シリコンハイドロゲルという新素材が開発されました。
レンズに含まれるシリコーンが直接酸素を通すため、この素材のレンズは裸眼とほとんど変わらない酸素透過性があり、長時間装用でも角膜の酸素不足になることがなくなりました。

日本ではシリコンハイドロゲルレンズはすべて使い捨てレンズ(一日使い捨てタイプは未発売)ですので、ソフトレンズのマイナス面である汚れと酸素不足の問題を一挙にクリアしたレンズということになります。
最近は供給メーカーも増え(ジョンソン&ジョンソン、チバビジョン、ボシュロム、メニコン)、乱視用のレンズも発売されたため適応範囲も広がりレンズの選択肢が増えました。それではシリコンハイドロゲルレンズには問題点がないのでしょうか。

このレンズは従来のソフトレンズと較べて弾性率が大きくいわゆる硬い素材になります。
このため角膜に対するレンズのフレキシビリティーが従来型の素材と較べて低い傾向が有るようです。レンズメーカーはレンズデザインを工夫したり、複数のカーブを用意したりして対応をしていますが、一社一規格のレンズで万人の目に合うということはありません。「A社のレンズを試して上手くいかないならばB社、C社のレンズを試してみる」といった柔軟な対応と各メーカーのレンズ特性に関する深い知識が処方側に求められるのです。

今まで述べたように、使い捨てシリコンハイドロゲルレンズの出現によってソフトレンズが目に悪いといった考えは過去のものとなりました。
ただしレンズ自体の性能や生体適合性が向上しても、レンズケアをしっかり行わなければせっかくのシリコンハイドロゲルレンズの優れた特性をいかすことはできなくなります。一日使い捨てあるいは連続装用タイプのレンズ以外のソフトレンズはすべて消毒が必要になります(ちなみにハードレンズは消毒不要)。
以前は煮沸をしていた消毒方法も現在は専用薬品による化学消毒が主流になっています。洗浄すすぎ、保存、消毒が一本でできる一液タイプ(MPSという)のものは簡便ですが、消毒作用が弱いのでレンズを外した直後の擦り洗いが必要なことと、特定のシリコンハイドロゲルレンズと特定のMPSとの相性で悪い組み合わせがあることに注意しなければなりません。
シリコンハイドロゲルレンズを初めて購入するときは消毒方法についてもくわしくアドバイスをしてもらえる施設を選ぶようにしましょう。

海外ではこの素材のカスタムメイドレンズや一日の使い捨てレンズも発売されています。

一日使い捨てレンズ以外のソフトレンズユーザーの方は、ぜひご自分にあったシリコンハイドロゲルレンズを第一選択にされてください。

ハードレンズのトラブルシューティング

ハードレンズの不調で多い訴えは、異物感、充血、くもりです。

異物感について
レンズは角膜上を動き瞬目時に瞼結膜ではさまれて動くため、異物感を感じる場所は当然角膜と瞼結膜になるわけです。レンズのカーブがきつすぎると角膜への圧迫と擦れが強くなり、ゆるすぎると瞼結膜への引っ掛かりが強くなります。

ハードレンズはカーブや大きさといったパラメーターが変化すると動きが変わり、装用感も変わってきますので、妥協せずにレンズのカーブや大きさを換えてもらうことがポイントになります。

充血について
レンズのカーブがきつすぎて物理的な強い圧迫や擦れによる角結膜障害が起きて充血している場合は初歩的な処方ミスということになります。

ハードレンズはレンズ下の涙を交換するため、最周辺部にベベルという内面の浮き上がりを持っています。そのためレンズ周辺の涙液がレンズ下に引き込まれ、レンズ周辺の角結膜は乾燥した状態になり表面が荒れて炎症が起きるため充血するようになります。この充血は時計でいえば3~4時と8~9時の位置に起こり、もともと瞼列班という球結膜の盛り上がりがある場合は特に目立つようになります。
瞬目によるレンズの引き上げがない場合がほとんどですので、角膜保護薬や人工涙液を頻回に点眼して意識的な瞬目を心がけるようにしましょう。そしてレンズのサイズを小さくして周辺角結膜へのレンズの影響を少なくしてもらってください。

くもりについて
「何度きれいに洗ってもレンズが装着後すぐくもる」この訴えは実に多いものですが、擦り洗いが不十分という理由で片付けられていることが多く、フィッティングに問題があることが認識されていないことが多いようです。

もちろん表面処理がされていないレンズは研磨剤が入ったクリーナーで、表面処理がされているレンズは専用クリーナーでしっかり擦り洗いをすることと、ハンドクリーム等が付いた指先でレンズを扱わないことが基本ですが、これでもくもる場合はどのように対処したらいいのでしょうか。

瞬目が浅く、上眼瞼結膜のレンズ表面へのワイパー作用がない場合は、水濡れ性がよく汚れが付きにくい表面加工がされているレンズに変更するか、酸素透過性が低い汚れにくいレンズに変更する必要があります。酸素透過性が高く表面処理がされていないレンズは特に要注意です。

眼瞼の縁にはマイボーム腺の開口部がありますがここからは油が出ています。この油は涙の上に広がって涙の蒸発を防ぐ働きがあるのですが、レンズのエッジの刺激によって分泌が増え、レンズの表面に直接付着すると涙をはじいてくもりの原因になります。この場合はカーブをきつくしたりサイズを小さくしてレンズエッジの浮き上がりを小さくする必要があります。

レンズが角膜に固着しても、瞬目時にマイボーム腺開口部が角膜側にめくれて油が付きやすくなります。多くはレンズのカーブがきつくてレンズが角膜に固着していることが原因ですから、カーブをゆるいものに変更したり厚みの違う他メーカーのレンズに変えて動きを出す必要があります。

今まで述べてきたようにレンズの快適な装用ができないときは原因があるものです。

ハードレンズは度数以外にカーブと大きさを変えることができますから、不調時はたとえ当日受取りができなくても、在庫にあるレンズで妥協せずいろいろと変えてもらうことが必要です。このためには不調の原因を理論的に分析することフィッティングをしっかりみる技術が必要になのです。

不調時、保証によるレンズ交換をしてもらうとユーザー側は妙に納得してしまいます。保証交換期間が長いレンズは、レンズ処方技術の未熟さをカバーできる都合のいいレンズでもあり、(傷や変形などのレンズ自体に問題がある場合は別として)何度新しく交換してもらっても不調が続く場合は要注意です。

ハードレンズは硬いレンズですから、本来必要に応じて研磨修正といった調整ができることが望ましく、大きさやカーブの変更だけでは解決しない不調にも対応できるようになるのです。ハードレンズの研磨修正が出来る施設はドクターのハードレンズに対する造詣も深く不調にも十分対応できるものです。

ハードレンズの酸素透過性について

よくコンタクトレンズショップで酸素透過性が高いレンズほど「星」の数が多くお勧めレンズとなっていますが、これは一面的なレンズの評価と言わざるを得ません。

ハードレンズはソフトレンズと較べて小さく、レンズで覆われている角膜の面積の割合は、例えば角膜径11.5mmに対してレンズ径8.8mmとすると58.5%となり、四割以上は裸眼ということになります。
また角膜への酸素供給量の90%近くは瞬目によるレンズ下の涙の交換でまかなわれています。レンズが動いて涙液がきちんと交換されている限りは、角膜への酸素供給量は素材の酸素透過性とはほとんど無関係といえます。

ただしドライアイ症状によってレンズが固着して瞬目によるレンズの動きがなくなってしまうとレンズ下の涙液交換がなくなりますから、素材の酸素透過性が非常に重要になってきます。

どんなに酸素透過性が高くてもレンズが固着してしまうと充血とくもりという不調がでます。特に最近の高酸素透過性のレンズ(弾性率の小さい俗に言う柔らかハード)は薄型設計のため、瞬目によるレンズの引き上げが弱く固着しやすいので要注意です。

要は瞬目によるレンズの動きがきちんとあることが快適なハードレンズ装用にとって大切であり、高酸素透過性レンズを選択するということは、レンズが固着したとき角膜への酸素供給を十分確保するということにすぎないのです。

レンズの大きさ、カーブおよびメーカーをいろいろと変更してもらっても異物感、充血やくもりが改善しない方は可能であればレンズの修正研磨をしてもらうのがいいでしょう。
円錐角膜や角膜外傷後のような特殊な角膜不正乱視眼は基本的にハードレンズの適応になりますが、通常眼の場合はシリコンハイドロゲルソフトレンズも選択肢のひとつです(乱視対応レンズもあり)。