ハードレンズの不調で多い訴えは、異物感、充血、くもりです。
異物感について
レンズは角膜上を動き瞬目時に瞼結膜ではさまれて動くため、異物感を感じる場所は当然角膜と瞼結膜になるわけです。レンズのカーブがきつすぎると角膜への圧迫と擦れが強くなり、ゆるすぎると瞼結膜への引っ掛かりが強くなります。
ハードレンズはカーブや大きさといったパラメーターが変化すると動きが変わり、装用感も変わってきますので、妥協せずにレンズのカーブや大きさを換えてもらうことがポイントになります。
充血について
レンズのカーブがきつすぎて物理的な強い圧迫や擦れによる角結膜障害が起きて充血している場合は初歩的な処方ミスということになります。
ハードレンズはレンズ下の涙を交換するため、最周辺部にベベルという内面の浮き上がりを持っています。そのためレンズ周辺の涙液がレンズ下に引き込まれ、レンズ周辺の角結膜は乾燥した状態になり表面が荒れて炎症が起きるため充血するようになります。この充血は時計でいえば3~4時と8~9時の位置に起こり、もともと瞼列班という球結膜の盛り上がりがある場合は特に目立つようになります。
瞬目によるレンズの引き上げがない場合がほとんどですので、角膜保護薬や人工涙液を頻回に点眼して意識的な瞬目を心がけるようにしましょう。そしてレンズのサイズを小さくして周辺角結膜へのレンズの影響を少なくしてもらってください。
くもりについて
「何度きれいに洗ってもレンズが装着後すぐくもる」この訴えは実に多いものですが、擦り洗いが不十分という理由で片付けられていることが多く、フィッティングに問題があることが認識されていないことが多いようです。
もちろん表面処理がされていないレンズは研磨剤が入ったクリーナーで、表面処理がされているレンズは専用クリーナーでしっかり擦り洗いをすることと、ハンドクリーム等が付いた指先でレンズを扱わないことが基本ですが、これでもくもる場合はどのように対処したらいいのでしょうか。
瞬目が浅く、上眼瞼結膜のレンズ表面へのワイパー作用がない場合は、水濡れ性がよく汚れが付きにくい表面加工がされているレンズに変更するか、酸素透過性が低い汚れにくいレンズに変更する必要があります。酸素透過性が高く表面処理がされていないレンズは特に要注意です。
眼瞼の縁にはマイボーム腺の開口部がありますがここからは油が出ています。この油は涙の上に広がって涙の蒸発を防ぐ働きがあるのですが、レンズのエッジの刺激によって分泌が増え、レンズの表面に直接付着すると涙をはじいてくもりの原因になります。この場合はカーブをきつくしたりサイズを小さくしてレンズエッジの浮き上がりを小さくする必要があります。
レンズが角膜に固着しても、瞬目時にマイボーム腺開口部が角膜側にめくれて油が付きやすくなります。多くはレンズのカーブがきつくてレンズが角膜に固着していることが原因ですから、カーブをゆるいものに変更したり厚みの違う他メーカーのレンズに変えて動きを出す必要があります。
今まで述べてきたようにレンズの快適な装用ができないときは原因があるものです。
ハードレンズは度数以外にカーブと大きさを変えることができますから、不調時はたとえ当日受取りができなくても、在庫にあるレンズで妥協せずいろいろと変えてもらうことが必要です。このためには不調の原因を理論的に分析することフィッティングをしっかりみる技術が必要になのです。
不調時、保証によるレンズ交換をしてもらうとユーザー側は妙に納得してしまいます。保証交換期間が長いレンズは、レンズ処方技術の未熟さをカバーできる都合のいいレンズでもあり、(傷や変形などのレンズ自体に問題がある場合は別として)何度新しく交換してもらっても不調が続く場合は要注意です。
ハードレンズは硬いレンズですから、本来必要に応じて研磨修正といった調整ができることが望ましく、大きさやカーブの変更だけでは解決しない不調にも対応できるようになるのです。ハードレンズの研磨修正が出来る施設はドクターのハードレンズに対する造詣も深く不調にも十分対応できるものです。